若者の活字離れは止められない。TikTok世代vsゆとり世代
@monoshiri_lab Twitterより再編集
SNSによる人々の価値観の均質化が急激に進んでいます。
YouTubeの垢BAN、Twitterの凍結のように、物事の発言・発信に対する「良い悪い」の判断基準が世界中で同じように共有されつつように感じます。
今後、途上国各国に建設される5Gの基地局は、電波だけでなく「先進国の価値観」も同時に運んでいくわけで、そのグローバル化の流れに逆らうことはできないでしょう。
また、5G通信では速度制限がなくなるかもしれないと期待されています。若者の活字離れが話題になっていますが、速度制限の廃止はその流れを加速させていきます。
少し前に流行ったVineが6秒動画、その次に流行したInstagramのストーリー、その次に隆盛したTikTokはYouTubeよりも短い15秒動画ですね。
中高生にとってSNS利用はWi-Fiのない学校でアップロードや視聴したりすることもありますから、現在の通信規格では「速度制限」がコンテンツの鍵になっています。
2019年以後、現在の4G LTEから5G通信に移行することで、この「通信制限」という壁が徐々に無くなっていくことが予想できます。
それに対応するように、長時間の動画や、まるで生中継のようなライブ感を演出したSNSが流行するかと思います。(というかもうすでに流行ってきています)
ただ、この動画コンテンツの急激な成長に対して、ひとつの疑問があります。
「人が1日に視聴できる動画の長さ」には限界がある…ということ。
「人が1日に視聴できる動画の長さ」
→学生なら5時間、社会人なら2時間程度です。
有名インフルエンサーによってブログがオワコンだと叫ばれる昨今、増え続ける配信者どうしで、この動画コンテンツの視聴時間の奪い合いが始まっていくのではないかと思います。
というのは、YouTubeで配信される人気動画の再生時間や、広告動画の長さがだんだんと短くなってきている印象があるのです。
言語ツールであった1万文字スケールのブログが、たった140字のTwitterへと移行したように、
YouTubeの配信動画も2020年代には、3分から5分動画が主流になっていそうですね。
ちなみに、TikTokやInstagramのストーリー等は、それを先回りした15秒動画という短さです。
この長さは、日本国内のテレビCMと同様の尺であるがために、視聴者が適切に感じる長さとして日本人に刷り込まれているのではないでしょうか。
また、TikTokは他のSNSに比べてフォロワー数が比較的増えやすい仕組みになっています。
15秒動画は4回再生すれば約1分ですから、1時間あれば240人分の動画を視聴可能ですね。
他のSNSに比べると「いいね」の数が時間に応じて雪だるま式に増えるため、その数を競いたい意欲的な10代が麻薬的にTikTokにハマってしまいます。
ちなみに、TikTokはフォロワーが1000人を超えると長尺の60秒動画が投稿できるようになっています。
発信を少し頑張れば手が届くフォロワー数なので、発信者はさらに熱狂的になってしまいますね。
すでにTikTokは国によってはInstagramのアクティブ数を抜いたとも聞きますし、YouTubeからもじわじわと視聴者を奪ってきている印象です。
また、これは最近テレビ番組を通じて知った話ですが、12歳の女の子がTikTokのフォロワー数250万人で、日本全国1位にランクインしてるそうです。
これは冗談抜きですごいです。250万人は大阪市の人口や宮城県の人口に匹敵します。
この世代(2000年代後半生まれ世代)が大学生になって就職活動をする頃には、企業が学生個人の自己発信を規制できないレベル(むしろ上手く利用したいレベル)にまで価値観が変容しているのではないでしょうか。
現状では企業コンプライアンスという名の下、サラリーマンがSNSを通して実名で自己発信をすることは、社会通念的には認められていません。
ただ、新入社員に対して無理にSNSの情報統治をしようとする企業は、人手不足も相まって優秀な若者に避けられていく運命だと思います。
学生時代に実名で1万人のフォロワーを手にした優秀な学生が、就職後にそのアカウントを簡単に辞められるでしょうか?
その足音は聞こえてきていますね(意味深)
ちなみに、ゆとり世代は企業のSNS情報統治に対して「匿名性(裏アカウント)」および「鍵アカウント」で対抗しました。
振り返れば2014年頃が境でしょうか、、
バカッターやバカスタグラムが話題になった以後、企業が新入社員のSNS活動を極端に規制したがために、InstagramやTwitterでは、ゆとり世代による「裏アカ」と「鍵アカ」だらけになってしまったのです。
実名利用のFacebookの衰退もこれに関係あるかと思います。
堂々と本名で発信している20代は意外と少ないですよね。
これは「親の目が気になる」とかではなく、現在の日本社会では、企業による規制によって、ほぼ言論の自由がないことを意味しています。本当に恐るべきは国家ではなく企業なのかもしれません。
ただし、ひとついえることは、
就職氷河期世代の部下がゆとり世代であるように、ゆとり世代の部下はTikTok世代になるわけです。
2000年以降生まれのスマホ ネイティブ世代の価値観をどのようにして企業や組織の活動として上手にドライブさせていくか。
人口減少社会における日本においては、切実な問題になってくるかもしれません。後輩世代と意見衝突を繰り返すようでは厳しいかと思います。
評価経済社会へ移りゆくなかで、TikTok世代と正面から "いいね勝負" をしたら、「匿名アカ」と「鍵アカ」に逃げてしまったゆとり世代、あるいはその上の世代は、発信力においては恐らく負けてしまうことでしょう。
そのような意味でこれからの時代は、自身で仕組みを投じながら、TikTok世代のスタープレイヤー(インフルエンサー)を育てる "静かなるプラットフォーマー" を構築できた者が真の勝ち組になっていくことでしょう。
日本の企業がその仕組みを作れるかどうかだと思います。
その中核に動画コンテンツがあるのかもしれません。
ただ、今後懸念すべきこともあります。
人工知能の発達で、まるで写真の合成のように動画を捏造できる技術、いわゆる「ディープフェイク」が今後、社会問題化するかもしれないと予測する人がちらほら増えてきました。
文字コンテンツが衰退し、動画コンテンツが主流となるなか、ディープフェイクに対して法的な対策を講じる必要性もあるかと思います。
動画コンテンツがそれだけ、経済活動にも、政治的にも、無視できないメディアへと変化してきています。
そしてTikTok世代が、そのフェイクの蔓延に対して、どのようにして真実を勝ち取っていくのか、小高いところから見守ろうではありませんか。
僕らゆとり世代にとって、いつかの未来をつくる仲間になるのは、スマホ片手にランドセルを背負っている少年・少女なのです。
2019/05/06